熊のささやき
むかしむかし、今成(高舘)あたりは動物の生息地だったそうです。お正月も近くなったある寒い日に、二人の狩人が「今日は寒いから肉汁でも食うべや。」といって出かけました。
山 に入ってみると、いつもならうさぎやきじなどを見るのですが、今日は何にも出会わなかったのです。それでも、狩人たちは奥へ奥へと進んでいきましたが、 さっぱり何にも会わないで午後になってしまいました。狩人たちは夜になるから帰ろうかと相談して、山をおりてきながら後ろの人に話しかけましたが、返事が ないので振り返ってみると後ろの人は高い木に登っていました。
するとすぐそばのささやぶでガサガサという音がして大きな熊が出てくるではありませんか。狩人はびっくりして逃げる事もできず、腹ばいになって死んだふりをしていると、熊は、狩人のそばまできて耳に口をよせましたが、すぐ通りすぎて行ってしまったそうです。
熊 の行ったあとでおき上がったら、木の上の狩人がおりてきて「木の上で見ていたら、きさまの耳のそばに熊が口をよせていたが、何かいったのか?」と聞きまし た。狩人は、「友達をおいて一人だけ逃げるような者とは、友だちになってはだめだよとささやいてくれたのさ。」と言ったそうです。