十三塚の笠地蔵さん
笠島(愛島)の里に貧しいじいさんと、ばあさんが笠を作って暮らしていました。
ある年、暮れになったので、じいさんはお正月の餅を笠と取り替えようと町に出かけました。
山道を通り松林を過ぎると雪まじりの北風がひどくなってきました。十三塚の峠の下りにさしかかった時、道ばたの地蔵さまは雪をかぶり、強い北風にふきさらされていました。
じいさんは「ああ雪っこかぶって地蔵さん、寒かんべなあ・・・・。」と思い、餅と取り替えようと背負ってきた笠を十二の地蔵さんに一つ一つかぶせてやり、足らなくなった一番はしの地蔵さんには自分のかぶってきた笠をかぶせてやりました。
峠を下ればすぐ町に出ますが、じいさんは家にもどり、ばあさんに笠と地蔵さんのことを話しました。ばあさんは、「ああ、それはいがった、いがった。」と喜んでくれましたが、正月の餅は食べられなくなりました。
つぎの朝「わっしょい、わっしょい・・・。」というかけ声がするので雨戸を開けてみると、縁側につきたての餅がいっぱい重ねてあるので、おじいさんとおばあさんはたいへんおどろきました。
雪がやんでまっ白になった丘のほうを見ると、笠をかぶった十三の地蔵さんが帰っていく姿が点々と見えました。
「一番先に行く地蔵さんがかぶっている笠は、じいさんのだべぇ・・・。」とばあさんはいいました。